コロナ禍の不安や政府による推進から、副業や兼業といった「一つの仕事に縛られない働き方」への関心が高まっています。
そのなかでも、日本でも著名な経営学者であるドラッカーが提唱する「パラレルキャリア」が注目されています。
本記事では、パラレルキャリアを持つことによるメリットや副業との違いなどについて解説し、製造業におけるパラレルキャリアについても確認していきます。
目次
パラレルキャリアとは
パラレルキャリアとは、本業の会社に軸足を置きつつ、社外での新たな仕事や非営利活動に取り組み、複数のキャリアを形成することで、オーストリアの経営学者ピーター・ドラッカーが著書のなかで提唱している「生き方」のひとつのことです。
ドラッカーによれば、人類が組織よりも「長生き」になったため、組織に頼らない第2の人生を持つ必要が生じたといいます。
人生は長いので、会社に依存した生活を送るだけでなく社会人サークルやボランティア、創作活動などを並行することで、人生を豊かにしなければならないというわけです。
副業との違い
パラレルキャリアと副業は、「社外で仕事を持つ」という点では共通しています。
両者の違いは、副業が「金銭を得ること」が目的であるのに対し、パラレルキャリアは「キャリアにまつわる経験」を得ることが目的となります。
例えば、起業の準備やボランティアなどがパラレルキャリアに含まれます。 ただし、金銭を得たらパラレルキャリアと呼べないかといえば、そうではありません。
自身の趣味や目標のためにイラストを描き続け、金銭が得られるようになった場合もパラレルキャリアと呼べる活動です。
パラレルキャリアが注目される背景
パラレルキャリアを持つべき理由は人の長命化だけではありません。まず大きな理由として、終身雇用制度の形骸化が挙げられます。
2020年にトヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用を守るのは難しい」と発言したように、日本では一つの会社に生涯勤め上げる意識は薄れてきています。
また、政府による副業の推進を始めとした、働き方の多様化もパラレルキャリアが浸透する下地となっています。フレックスタイム制やリモートワークなど、労働者が自由にできる時間が得やすくなったことも大きな要因といえるでしょう。
パラレルキャリアのメリット
人脈が広がる
パラレルキャリアを持つ大きなメリットとして、日頃出会えない人たちとの交流が挙げられます。
毎日同じ職場で仕事をしているだけで、新たな出会いがないと悩む人も多いのではないでしょうか。 人脈を広げることは、将来的に独立を目指す人にとっては欠かせない取り組みです。
また、自身の利益だけでなく企業にとってもビジネスチャンスになる可能性があり、本業での評価が上がることも期待されます。
仕事をしながら自己実現
「脱サラをして夢を追う」といった大胆な行動は、なかなかできるものではありません。 パラレルキャリアは、本業を持ったまま行うことがポイント。現在の生活を捨てることなく、夢を追ったり、キャリアアップを目指したりできます。
長年の夢を追いたいけれど、今の生活は捨てられないという人は、パラレルキャリアで気軽に夢への挑戦を始めてみるとよいでしょう。
スキルアップにつながる
普段の仕事がルーティンの業務だとしても、パラレルキャリアを持つことで新たなビジネススキルを磨ける可能性があります。 例えば、ボランティアやサークル活動で中心的立場となれば、ネゴシエーションやマネジメントなどの経験を積むことができます。
多様なビジネススキルは、自身のキャリア形成の大きな助けとなります。異動や転職など、異業種に携わる機会が訪れたときにも役立つことでしょう。
本業に新たな視点・モチベーションの向上
パラレルキャリアは今の仕事を見つめ直し、モチベーションを上げる意味でも役立ちます。自身で一から物事を始めてみると、自分の仕事を違った視点で見られるようになるからです。
例えば、個人で仕事を請け負うようになると、仕事を取ってくることの難しさを体験できます。ルーティンで退屈だと思っていた仕事も、会社を維持するために欠かせない仕事だと見つめ直すきっかけになります。
パラレルキャリアのデメリット・注意点
就業規則の内容に注意
就業規則で副業が禁止されている場合、パラレルキャリアの種類によっては就業規則違反となる恐れがあります。 ただし厳密には、企業は副業を禁止できないという見解があります。
憲法22条で「職業選択の自由」が保障されているためです。 一方で、企業が就業規則で副業を禁止することを止める法律もないため、副業を禁止する企業が多いのが現状です。
あくまでパラレルキャリアは本業を続けながら行うもの。もし会社のルールに抵触するか不安なら、上司や人事部などに相談してみましょう。
自身の健康に気を配る
副業についての問題ではありますが、厚生労働省「副業・兼業に係る実態把握の内容等について」によれば、副業を持つ人は過労死のラインである「残業80時間以上の労働」を行う傾向が高いようです。 副業を行う人は、全体の9.7%。これに対し、月の総労働時間が「240~280時間未満」の場合では14.9%、「280~320時間未満」の場合では19%、「320~360時間未満」の場合で14.2%と大きく増えます。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000660780.pdf
つまり、労働時間が長くなるほど副業をしている人の割合が増えることから、副業によって長時間労働に陥りやすい傾向があるわけです。 国が過労死を認定する基準として「病気の発症前の2~6ヶ月の残業時間が一ヶ月平均で80時間を超える」と定められていることからも、副業は働きすぎにつながる恐れがあるのです。
※月に240時間の労働で、おおよそ残業80時間の計算となる パラレルキャリアをもつ場合は、働きすぎにならないよう気をつけましょう。
製造業におけるパラレルキャリア
時間の融通
一般的なオフィスワークの場合、パラレルキャリアに当てる時間は土日が中心となります。
その点で製造業は、3交代制や平日休み、定時が早いなど、平日でも融通のきく時間が得られやすい特徴があります。
何をするにしても、競合の少ない時間帯を選べるのはメリットといえるでしょう。
就業の不安に対するパラレルキャリア
工場勤務の場合、体力・集中力などの問題から、将来的な就業の不安を抱える方も少なくないでしょう。先々の就業の不安を解消する意味でも、パラレルキャリアは有用です。別のキャリアを構築することで、安心して現在の仕事にも向き合えるからです。
また「高年齢者雇用安定法」の改正により、2025年からはすべての企業に「65歳への定年の引き上げ」「定年廃止」「65歳までの継続雇用制度」のいずれかが義務づけられます。長く働き続けるという意味でも、体力が衰えたあとのキャリアプランを見据えてパラレルキャリアを持つ意味は重要といえるでしょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000694689.pdf
人手不足と自身の価値
製造業においても、人手不足は深刻な問題です。経済産業省「製造業における人手不足の現状および外国人材の活用について」によれば、人手不足は、94%以上の大企業・中小企業で顕在化し、すでに32%の企業では仕事にも影響が出ているといいます。
参考:https://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180712005/20180712005-2.pdf
自社内では評価の低いスキルであっても、他社では「副業でもいいから手伝ってほしい」と評価が得られる可能性もあります。自身の客観的な評価は、ひとつの会社だけで決まるものではありません。自分を見つめ直す意味でも、パラレルキャリアは有効なのです。
ただ、気を付けるべきは「本業」を活かしたパラレルキャリアの場合は、その技術が企業の「機密情報」として認識される場合もありますので、情報漏洩に値しないか慎重に行うことが必要でしょう。
まとめ
仕事以外の生き方を持つというと、本業に支障が生じるのではと不安に思うかもしれません。しかし、パラレルキャリアは気分転換として、純粋に本業のモチベーションアップにつながるといった見方もあります。
日本の社会情勢と照らし合わせても、パラレルキャリアは非常に理にかなった生き方といえます。仕事を選ぶ際は、自身のパラレルキャリアを形成しやすい条件の企業を選ぶのもよいかもしれませんね。
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