最近の日本では「終身雇用の時代は終わった」と言われるようになり、過去に比べリストラの可能性も増えました。近年、大規模リストラや早期退職者募集などのニュースも増えており、将来に不安を覚えるビジネスパーソンも少なくありません。実際に総務省統計局の発表によると転職者数は増加傾向が続いており、2019年には過去最多を記録しています。
また、AIの普及により様々な職業が人から機械へ変わると言われており、自分の身だけでなく、そもそも業界や職種の将来性まで考える必要が出てきています。現状の会社に不安がある方や、そもそも業界や職種に不安がある方は、慌てずに対処できるようにしておくことが重要です。
この記事では将来への不安を解消する1つとして「自動車整備士資格を活かしたキャリア」を紹介します。そもそも自動車整備士とは国家資格でありまたその専門資格を活かした多様なキャリアアップ・キャリアチェンジも可能です。前半では自動車整備士の仕事内容ややりがいを、後半では整備士資格を活かしたキャリアチェンジを紹介します。
参考:増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~
目次
そもそも自動車整備士とは?
自動車整備士とは専門的な知識・技術を駆使して、主に自動車の点検・修理・整備をする仕事です。点検や整備により事故・故障を未然に防ぎ、万が一故障が発生した際にも原因を特定し故障を直します。点検・修理・整備の詳しい内容は次の通りです。
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- ◎点検
- 点検業務の内容は法律で定められている「車検」や大型車などの「定期点検」(3カ月点検等)です。また使用者から点検してほしいと言われる臨時的な点検もあります。 点検ではエンジンが正常に作動しているか、エンジンオイルやバッテリーやタイヤに異常がないかなどを確認します。点検は予期せぬ故障を未然に防ぐための要となります。
- ◎修理
- 修理では点検で見つかった不具合を直します。また、車が事故を起こしたり、突然故障してしまったりした際に、原因の特定や修理を行います。自動車には急にエンジンがかからなくなったり、ライトが点灯しなかったり様々な故障があります。それらを直し、車が安全に走れるようにするのが修理作業です。
- ◎整備
- 自動車は様々な機械部品で出来ています。特にエンジンやギア類は激しく動き続けるため、部品同士が擦れることによる摩耗や、そもそも部品が古くなることによる劣化もします。自動車が故障する前に劣化部品や摩耗部品などを交換するのが整備です。ですが、整備では簡単に交換できない部品が多く、自動車整備士の腕の見せどころでもあります。
自動車整備士に必要な資格を紹介
自動車整備士はとても専門性の高い仕事であり、国家資格が必要となります。また、資格も階級や扱う車種により次のように分かれています。資格は三級<二級<一級の順に難しく、上位の資格をとるためには実務経験が必要となります。ただし、経歴によっては必要ないため、詳細は厚生労働省のHPを確認されると良いでしょう。
参考:https://www.mlit.go.jp/about/file000057.html
- ◎一級自動車整備士
- 一級自動車整備士には次の3種類があります。
- ・1級大型自動車整備士
- ・1級小型自動車整備士
- ・1級二輪自動車整備士
- ◎二級自動車整備士
- 二級自動車整備士には次の4種類があります。
- ・2級ガソリン自動車整備士
- ・2級ジーゼル自動車整備士
- ・2級自動車シャシ整備士
- ・2級二輪自動車整備士
- ◎三級自動車整備士
- 三級自動車整備士には次の4種類があります。
- ・3級自動車シャシ整備士
- ・3級自動車ガソリン・エンジン整備士
- ・3級自動車ジーゼル・エンジン整備士
- ・3級二輪自動車整備士
- ◎特殊自動車整備士
- 特殊自動車整備士には次の3種類があります。
- ・自動車タイヤ整備士
- ・自動車電気装置整備士
- ・自動車車体整備士
自動車整備士のやりがいや苦労を紹介
仕事として自動車整備士を選ぶ前に必ず知っておきたい「苦労」と「やりがい」についてお伝えします。「苦労」や「やりがい」を知ることは仕事への適正の判断やモチベーションの維持に欠かせません。
自動車整備士としての苦労
①整備工場の作業環境に対策が必要
自動車の整備工場など自動車整備士の仕事場は空調が完備されている工場もありますが、やはり冷暖房などが備わってない所が多いです。そのため、夏は熱中症対策を、冬は防寒着を着用するなど対策が必要です。
②対人折衝などコミュニケーションが必要な場面も
対人折衝などコミュニケーションが必要な場面も自動車整備士の仕事の1つに故障箇所の修理があります。分かりやすい故障であればいいのですが、なかなか原因が分からないこともあります。また法人であろうと個人相手であろうと、相手は自動車の素人であり、そんなお客様を相手に説明をする場面もあります。
自動車が好きで整備士を選ぶ方は多いかと思いますが、対人折衝など人との関りが意外と多いこともこの仕事の特徴です。
③命を預かる責任ある仕事
自動車は多くの企業や個人にとって生活必需品でもあり、趣味嗜好性の強い商品でもあります。共通して言えるのは自動車を安心・安全に利用して頂き、人の命に係わっている重要かつ責任のある仕事ともいえます。責任のある仕事は仕事のやりがいに直結しますが、ときに重圧にもなるでしょう。
自動車整備士としてのやりがい
自動車整備士としての苦労をお伝えしましたが、それを超えるとても大きなやりがいを得られるのも自動車整備士の特徴です。詳しく見ていきましょう。
①感謝される仕事である
自動車は人々の生活になくてはならない「生活必需品」として捉える方が多いでしょう。つまり、自動車がなければ、そのライフスタイルが危ぶまれる方が大半でしょう。そんな自動車の故障・修理が出来る人は国家資格を持つ自動車整備士のみであり専門性の高い業務です。
自動車の故障や修理をすることで、多くの人から感謝の言葉を直接聞けることも仕事のやりがいになるでしょう。
②故障したものが直った時、点検で故障を未然に防いだ時の達成感が大きい
自動車の故障はすぐに原因が分からないことも多いです。例えば、エンジンが動かないとき、バッテリーが悪いのか、エンジンの内部が悪いのか、内部だとしたら1万個以上の部品の中からどこが悪いのか考える必要があります。
さまざまな情報を組み合わせ、パズルを解くように故障原因を解明していくことになります。自分が導き出した答えが故障の原因だった時の喜びは他に例えようが無いほど嬉しいです。
また、そもそも点検でほんとうに些細な違和感に気が付き、故障前に対応できた時などは心の中で自分を誇らしく思えます。
自動車整備士は故障を直す度にどんどん自信がつく、やりがいに満ちた仕事です。
③専門的なスキルが身につく
自動車整備士は業務内容が専門的なので、簡単には身につけられないような専門的なスキルがどんどん身につきます。自動車整備士の業界にいると周りも専門性が高いので気が付きにくいですが、替えがきかない専門性の高い人材に成長していることでしょう。
自動車整備士の将来性と活かし方
最後に自動車整備士の将来性と活かし方を紹介します。
自動車整備士の将来性
冒頭でもお伝えしましたが、自動車整備士の将来性は明るいです。 2020年に実施された経産省による「モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会」をもとにご説明します。
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/mobility_kozo_henka/001.html
今、自動車業界は自動化やCO2削減(電気自動車・水素自動車)に向けて動いています。人口減少や高齢化にともない国内での自動車の総数は減るかもしれませんが、その分自動運転車両の導入を検討しています。
また、ネットショッピングの普及に伴い事業用の車両の必要性が依然として高いです。 車両の変化に伴い業務内容の変化はあるかもしれませんが、自動車整備士の需要は今後も高いでしょう。またAIに変わられてしまう不安がある方もいるかもしれませんが、機械部品が連動して動く以上、必ず人が入る余地が生まれるので自動車整備士が不要となる可能性は低いでしょう。
自動車整備士資格を活かした働き方
ここまで自動車整備士に焦点を当ててお話ししましたが、自動車整備士の本当の魅力はキャリアプランの幅にもあります。転職を考えるとき「自動車整備士が合わなかったらどうしよう」、「給与等の待遇が合わなかったらどうしよう」、「別の業界に行きにくくなるかも」と不安になるものです。 ですが、自動車整備士資格の活かし方を知れば、その不安も無くなるでしょう。
◎自動車整備士の専門性をブラッシュアップ
自動車整備士が性に合うようであれば専門性をさらにブラッシュアップするのも良いでしょう。1級整備士や特殊整備士をとり、現場スペシャリストになることも可能です。また、コンサルなどの業務につきデスクワークに移行することも可能です。
◎メーカーでの設計・開発・営業
エンジンや車両の仕組みに詳しくなると自動車メーカーでの勤務も可能です。また、自動車整備士は電気・燃料・エンジン・空調といじるものが多く、専門性もとても高くなるので自動車メーカーに限らず、発電機のメーカーや全く別の機械メーカーに勤務すること可能です。
◎機械系エンジニア
メーカー勤務と同様に、様々な業界でエンジニアとして働くことも可能です。機関車や船舶やヘリコプターのエンジニア、ポンプ機器や医療機器のエンジニアなど選択肢は無限大です。
◎商社のサービス部門
商社では国内であまり作られていないような車両を海外から購入してくる会社があります。国内で作られていない車両はメンテナンス業者がいないことも多く、商社で専門のメンテナンス部隊を持つこともあります。自動車整備士として専門的な知識をつければ、そんな特殊な車両に関わることもできます。
◎自動車整備管理者
現場があまり好きではない人におすすめなのが自動車整備管理者です。道路運送車両法50条に定められていて、大型の車両をもつ会社のほとんどで必要な人員になります。車庫の管理から日々の運転許可の判断まで幅広く車両を管理することになります。 管理する立場故にオフィスワークとして働く事も多く、大小様々な企業で必要とされています。
【まとめ】自動車整備士は将来の不安が少なく、キャリアも豊富
自動車整備士は国家資格が必要な専門性の高い職業です。自動車という生活・事業に欠かせない機械を扱うため、やりがいはとても大きいです。日本は自動車大国であり、今後も自動車は廃れることなく日々進化していきます。それ故に、自動車整備士は将来的にみても必要とされ続ける職業です。
また、専門性と希少性から自動車整備士として経験を積むことで自動車以外の方向へキャリアチェンジすることも十分可能です。誰でも出来る仕事でないからこそ自動車整備士を足がかりとして理想のキャリアプランを築いていくのも良いでしょう。
求人を確認するだけでも様々なキャリアプランが見えて不安は減るものです。また、現職に何かあった時に備え、いつでも転職できるように準備だけでもしておくことで不安はさらに解消されます。
みらいキャリアでは自動車整備士としての経験を積める求人を紹介しているので、応募要件や将来のキャリアプランの確認に役立ててみてください。